帰化許可申請
帰化と永住はどちらを選ぶか──国籍法第5条の6条件と、性質の違い
公開 2026.08.24 / 最終確認 2026.08.24
- 根拠
- 国籍法第4条・第5条、法務局「帰化について」の公表内容(2026年4月1日更新)
- 所管
- 法務局・地方法務局(入管ではありません)
- 対象
- 帰化を検討している方、永住との違いを知りたい方
- 確認日
- 2026年8月24日時点
永住許可については、手数料を1万円から20万円へ引き上げる政令改正案が示され、ガイドラインの改定案も公表されています。詳しくは永住許可の基準はどう変わるのかで整理しました。
この動きを受けて、帰化という選択肢に目を向ける方もいると思います。ただ、この2つは「どちらが得か」で比べるものではありません。帰化は日本国籍を取得する手続きで、原則としてそれまでの国籍を失います。永住は外国籍のまま日本に住み続ける在留資格です。性質が違うので、費用や難易度だけで選ぶ判断にはなじみません。
この記事では、帰化の条件を条文にもとづいて整理したうえで、両者の違いを並べます。
帰化はどこに申請するのか
まず押さえておきたいのが、帰化は入管の手続きではないということです。在留資格の手続きは出入国在留管理庁ですが、帰化は法務局・地方法務局が窓口で、許可するのは法務大臣です(国籍法第4条)。法務大臣が帰化を許可した場合は官報に告示され、帰化はその告示の日から効力を生じます(国籍法第10条)。
申請は本人が出向く必要があります。これは運用ではなく規則に定められた義務で、国籍法施行規則第2条第1項が、帰化許可申請等をしようとする者はみずから法務局もしくは地方法務局または日本の領事館その他の公館に出頭し、申請書等を提出しなければならないとしています(15歳未満のときは法定代理人が出頭します)。
在留資格の申請には申請取次という制度があり、届出をした行政書士が本人に代わって書類を提出できますが、帰化にはその仕組みがありません。行政書士に依頼する場合の業務は、要件の判定、本国書類や公的証明書の収集、帰化動機書や申請書類の作成、法務局への同行といった支援になります。申請そのものはご本人が行います。
国籍法第5条の6つの条件
法務局は、帰化の一般的な条件として次の6つを挙げています。あわせて、これらを満たしていても必ず帰化が許可されるとは限らず、最低限の条件を定めたものであるとしている点も押さえておくべきです。
(1) 住所条件
帰化の申請をする時まで、引き続き5年以上日本に住んでいることが必要です。住所は適法なものでなければならず、正当な在留資格を有していることが前提になります。
(2) 能力条件
年齢が18歳以上であって、かつ、本国の法律によっても成人の年齢に達していることが必要です。日本の基準だけでなく、母国の法律でも成人であることが求められます。
(3) 素行条件
素行が善良であることが必要です。法務局は、素行が善良であるかどうかについて、犯罪歴の有無や態様、納税状況や社会への迷惑の有無等を総合的に考慮し、通常人を基準として、社会通念によって判断されるとしています。
前科の有無だけを見るものではありません。税金の納付状況、公的年金保険料の納付、交通違反歴なども含めて総合的に判断されるため、日常の記録が積み上がる部分です。
(4) 生計条件
生活に困るようなことがなく、日本で暮らしていけることが必要です。ここで重要なのが判断の単位です。この条件は生計を一つにする親族単位で判断されるため、申請者自身に収入がなくても、配偶者やその他の親族の資産または技能によって安定した生活を送ることができれば、この条件を満たします。
(5) 重国籍防止条件
無国籍であるか、原則として帰化によってそれまでの国籍を喪失することが必要です。例外として、本人の意思によってその国の国籍を喪失することができない場合は、この条件を備えていなくても帰化が許可になる場合があります(国籍法第5条第2項)。国籍離脱を認めない国の出身者に関わる規定です。
(6) 憲法遵守条件
日本の政府を暴力で破壊することを企てたり主張するような方、あるいはそのような団体を結成したり加入しているような方は帰化が許可されません。
条文のほかに法務局が挙げていること
法務局は、上記6条件を示したうえで、次のように記載しています。
日常生活に支障のない程度の日本語能力(会話及び読み書き)を有することや、10年以上在留していることなど、日本社会に融和していることが必要とされています。
条文上の住所条件は「引き続き5年以上」です。法務局はこれとは別に、日本社会への融和という観点から10年以上の在留を例示しています。条文が定める要件と、融和の判断で見られることは、分けて整理しておく必要があります。
日本語能力についても、試験の合格が条件として条文に定められているわけではありませんが、会話と読み書きの両方について、日常生活に支障のない程度が挙げられています。
条件が緩和される場合(簡易帰化)
日本と特別な関係を有する外国人については、上記の条件が一部緩和されます(国籍法第6条から第8条まで)。誰にどの条件が緩和されるかは条文で分かれているので、自分がどの類型に当たるかを確認することが出発点になります。
日本との地縁・血縁がある場合(第6条)
次に当たる方は、引き続き5年以上日本に住所を有していなくても帰化が認められます。
- 日本国民であった者の子(養子を除く)で、引き続き3年以上日本に住所または居所を有する者
- 日本で生まれた者で、引き続き3年以上日本に住所もしくは居所を有し、またはその父もしくは母(養父母を除く)が日本で生まれた者
- 引き続き10年以上日本に居所を有する者
3つ目の類型に注意してください。「住所」ではなく「居所」で足り、しかも身分関係を問いません。日本に長く暮らしてきた方が該当する可能性があります。
日本人の配偶者の場合(第7条)
日本国民の配偶者である外国人は、次のいずれかに該当すれば申請できます。住所条件と能力条件が緩和されるため、18歳未満でも申請が可能です。
- 日本国民の配偶者で、引き続き3年以上日本に住所または居所を有し、かつ現に日本に住所を有する者
- 日本国民の配偶者で、婚姻の日から3年を経過し、かつ引き続き1年以上日本に住所を有する者
2つ目の類型に注目してください。婚姻から3年経っていれば、日本での在留は1年で足ります。海外で結婚して来日した方の場合、5年を待つ必要がない場合があるということです。
日本との身分関係がある場合(第8条)
次に当たる方は、住所条件・能力条件・生計条件などの一部が免除されます。
- 日本国民の子(養子を除く)で、日本に住所を有する者
- 日本国民の養子で、引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ縁組の時に本国法で未成年であった者
- 日本の国籍を失った者(日本に帰化した後に日本の国籍を失った者を除く)で、日本に住所を有する者
- 日本で生まれ、かつ出生の時から国籍を有しない者で、その時から引き続き3年以上日本に住所を有する者
生計条件まで免除される類型がある点は押さえておくべきです。第5条の原則では生計を営めることが求められますが、第8条に当たる場合はここが外れます。
注意したい点:条件が緩和されるのは、あくまで条文が定める部分だけです。素行条件や重国籍防止条件、憲法遵守条件は変わりません。また、法務局が挙げている「日常生活に支障のない程度の日本語能力」や「日本社会への融和」は、緩和の対象として条文に書かれているものではありません。年数が短くて済むことと、審査が軽くなることは別の話です。
帰化と永住の違い
| 項目 | 帰化 | 永住 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 国籍法 | 入管法 |
| 窓口 | 法務局・地方法務局 | 出入国在留管理庁 |
| 国籍 | 原則としてそれまでの国籍を失う | 外国籍のまま |
| 在留カード | 不要になる | 引き続き必要 |
| 在留期間の更新 | 不要 | 不要(在留カードの更新は必要) |
| 申請の主体 | 本人が出向いて申請 | 本人または申請取次者 |
| 効力の発生 | 官報告示の日から | 許可の時から |
最も大きな違いは国籍です。帰化すると、原則として母国の国籍を失います。パスポートが変わり、母国での在留や就労が外国人としての扱いになる場合があります。母国での不動産の所有や相続に制限が生じる国もあります。
一方で、日本国籍を取得すれば在留資格という枠組みから外れます。在留期間を意識する必要がなくなり、就労の制限もなくなります。
どちらが上ということではなく、何を優先するかの問題です。母国との関係を保ちたいのであれば永住、日本国籍を取得したいのであれば帰化。費用や手続きの重さは、判断材料のひとつではあっても、決め手にはなりません。
準備の負担について
帰化の申請では、国籍を証する書面および身分関係を証する書面について、原則として本国官憲が発給したものを提出する必要があります。法務省は、申請者の国籍や身分関係、職業などによって必要な書類が異なるため、申請に当たっては法務局・地方法務局に相談するよう案内しています。
母国の役所から書類を取り寄せ、日本語に翻訳する作業が発生します。国によっては取得に数か月かかることもあり、書類の収集そのものが手続きの大きな部分を占めます。この実費は、専門家に依頼するかどうかにかかわらず必要です。
また、法務局への相談・書類の事前確認・申請と、複数回にわたって足を運ぶことになります。平日の日中に何度か時間を確保できるかは、着手前に考えておくべき点です。
日本人の配偶者として在留している方は、第7条の緩和の対象になり得ます。在留資格そのものの手続きについては配偶者ビザの「質問書」とスナップ写真は何のためにあるのかで整理しています。
費用面では、永住許可の手数料が2026年10月1日から変わります。帰化許可申請の手数料とは扱いが別なので、在留手続の手数料改定とあわせてご確認ください。
まとめ
- 帰化は入管ではなく法務局の手続き。許可するのは法務大臣
- 申請は本人が出向いて行う必要がある(15歳未満は法定代理人)
- 条文上の住所条件は5年。法務局はこれとは別に、融和の観点から10年以上の在留を例示している
- 能力条件は18歳以上、かつ本国法でも成人であること
- 生計条件は生計を一つにする親族単位で判断される
- 本国の国籍を失えない事情がある場合、重国籍防止条件には例外がある
- 第6条には「引き続き10年以上日本に居所を有する者」という、身分関係を問わない類型がある
- 日本人の配偶者は婚姻3年+在留1年などの緩和がある(第7条)。日本人の子などは生計条件まで免除される類型がある(第8条)
- 帰化と永住は国籍を失うかどうかが決定的な違い。費用や難易度で選ぶ性質のものではない
本記事は確認日時点の一般的な整理であり、個別の申請の結果を保証するものではありません。必要書類は国籍や身分関係によって異なりますので、法務局にご相談いただくか、資料を拝見したうえでお答えします。
実際に用意する書類の分量は帰化申請の必要書類で、神奈川県内の窓口は管轄法務局と戸籍関係書類の集め方で整理しています。
申請後には面接があります。時期と所要時間は帰化申請の面接で整理しています。
この記事の根拠
- 法務局「帰化について」(2026年4月1日更新)
https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000001_00885.html - 法務省「国籍Q&A」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html - 法務省「国籍法」
https://www.moj.go.jp/MINJI/kokusekiho.html - 国籍法施行規則(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/359M50000010039