TNG横浜国際行政書士オフィス在留資格の実務メモ

在留資格「永住者」

永住許可の基準はどう変わるのか──2026年8月公表のガイドライン改定案を、確定した話と未確定の話に分けて読む

根拠
「永住許可に関するガイドライン改定案」に係る意見募集(出入国在留管理庁)
公示日
2026年8月4日(意見募集の締切は2026年9月4日)
対象
これから永住許可を申請する方、将来的に永住を検討している方
確認日
2026年8月17日時点

永住許可の基準が厳しくなる、という話が7月頃から出回っています。ただ、いま出ている情報には3つのレベルが混ざっています。すでに決まったこと、案として公表されただけのこと、そして誰かが推計しただけの数字です。この3つを分けずに読むと、必要のない不安を抱えたり、逆に間に合うはずの準備を逃したりします。

この記事では、その切り分けを軸に整理します。結論を先に書くと、ガイドラインの中身はまだ確定していません。2026年8月4日に改定案が公表され、意見募集が行われている段階です。

いま何が起きているのか

2026年8月4日、出入国在留管理庁が「永住許可に関するガイドライン」の改定案を公表し、あわせて1か月間の意見募集(パブリックコメント)を開始しました。現行のガイドラインが1ページに満たない分量だったのに対し、改定案は13ページ・6章構成へと大幅に拡充されています。

永住許可の要件そのものは入管法第22条に定められていて、素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産または技能があること、その者の永住が日本国の利益に合すると認められること、の3つです。ガイドラインはこの3要件について、審査でどこを見るかという考慮要素を示すものです。要件そのものではありませんが、実務上はこれを満たすことが前提になるため、事実上の基準として機能します。

読むときの前提:以下は意見募集中の案の内容です。最終的なガイドラインでは変わる可能性があります。この記事は確認日時点の案文と公表資料に基づく整理であり、審査の結果を保証するものではありません。

案として示されている主な変更点

年収の水準

これまでは「安定した収入があること」という考え方でしたが、改定案では、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を継続して上回ることが考慮要素として示されています。

ここで注意が必要なのは、具体的な金額が示されていないことです。年収の具体的な金額や不足資産の基準、日本語能力の認定方法といった重要な数字の多くは、まだ確定していません。ネット上には「◯◯万円以上」という数字がいくつも流れていますが、その多くは民間が公的統計から推計したもので、入管庁が基準として公表した額ではありません。

年金の受給見込額

新たな考慮要素として、将来受給できる年金額が審査対象に加えられ、30年間厚生年金に加入した場合の水準を目安とし、不足する場合は金融資産も考慮するとされています。

これは実務上、かなり重い変更です。日本での就労期間が短い方ほど厚生年金の加入期間が足りず、いま働いていても将来の受給見込額が伸びていない、という状況が起こり得るためです。自分の見込額は「ねんきんネット」や毎年届く「ねんきん定期便」で確認できます。まずは現状を数字で把握するところからです。

日本人の配偶者等の特例

現行では婚姻3年以上かつ日本在留1年以上で申請できる特例がありますが、改定案では婚姻5年以上かつ日本在留3年以上へ変更する案が示されています。

配偶者としての永住を予定している方にとっては、申請できる時期が単純に後ろへずれることになります。該当する方は、現行基準で申請できる時期にあるかどうかを早めに確認する意味があります。

在留期間と出国の扱い

原則10年在留、うち就労資格または居住資格での在留が5年という枠組み自体は維持されています。ただし出国について新しい記述が加わり、申請時点から過去10年以内に、合理的な理由なく1回の出国で半年以上不在とした期間がある場合、または通算して2年6か月以上不在とした場合は、原則として消極評価をするとされています。現行のガイドラインに明文はなく、実務上の運用を文章にしたものと見られます。

公租公課の支払い

ここが最も見落とされやすい部分です。改定案は「公租」を租税全般、「公課」を租税以外の負担金(公的医療保険、公的年金等)と定義したうえで、申請時点で未納がなかったとしても、過去に滞納処分を受けたことがあるなど過去において適切に支払っていない状況が認められる場合は、原則として消極評価をするとしています。さらに、この考慮要素は原則として同一生計世帯単位で審査を行うとされています。

つまり、いま完納していれば足りるわけではなく、過去の払い方が問われます。しかも世帯単位です。本人に問題がなくても、同じ世帯の家族に未納や期限後納付があれば影響し得るということになります。

なお、経営・管理の在留資格から永住を目指す場合は、2025年10月に改正された経営・管理の基準に適合していることも前提になります。詳しくは経営・管理ビザを新しく取るには何が必要かをご覧ください。

実務上の注意:過去の期限後納付は、あとから直すことができません。就労資格からの申請では直近数年分が確認の対象になりますから、いま改善しても効果が出るのは数年先です。これは改定を待つまでもなく、現行の運用でもすでに評価に影響する部分です。永住を視野に入れているなら、住民税と社会保険料は「未納をなくす」ではなく「期限内に払う」を今日から徹底してください。

なお、永住許可申請は在留申請オンラインシステムの対象手続として挙げられていないため、窓口へ出向くか、申請取次の届出をした行政書士等に依頼することになります。神奈川県内の窓口については、横浜入管はどこに行けばいいかで整理しています。

手数料の引上げ

ガイドラインとは別に、永住許可申請の手数料を現行1万円から20万円に引き上げる政令改正案が示されており、2026年10月1日以降に受け付ける申請分から適用される方針とされています。

手数料は許可が出たときに納めるものなので、不許可の場合に負担は生じません。ただ、金額が大きく変わる以上、申請時期の判断材料にはなります。

では、いつ申請すべきか

「値上げ前に駆け込んだほうがよいか」という点が気になる方も多いと思います。考え方は単純です。

  • 現行の基準をすでに満たしているなら、前倒しで申請を検討する実益があります
  • 要件が整っていないなら、急いで出しても許可は出ません。不許可になれば、再申請時には引き上げ後の手数料と新しい基準が同時にかかってきます

順番としては、要件が満たせているかの確認が先で、値上げ回避はその次です。期限に追われて中身の伴わない申請をするのは、いちばん損な選択になります。

いま確認しておくとよいこと

  • 直近数年分の住民税が、未納だけでなく期限内に納付されているか
  • 健康保険料・年金保険料の納付状況(同一世帯の家族の分も)
  • 「ねんきんネット」等で確認できる年金の加入期間と受給見込額
  • 過去10年の出国歴(半年以上の連続した不在、通算の不在期間)
  • 配偶者としての申請を考えている場合、婚姻期間と在留期間

永住ではなく帰化という選択肢を検討する場合は、帰化と永住はどちらを選ぶかで両者の性質の違いを整理しています。

まとめ

  • 改定案は2026年8月4日公表、意見募集の締切は9月4日。まだ確定していない
  • 年収は「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を継続して上回る」方向だが、具体的な金額は未確定。出回っている数字の多くは民間の推計
  • 年金の受給見込額が新たな考慮要素として案に入っている
  • 配偶者特例は「婚姻5年・在留3年」への変更案
  • 公租公課は過去の払い方まで見られ、原則として同一生計世帯単位で審査される案
  • 手数料20万円への引上げは2026年10月1日以降の受付分から適用の方針

なお、改定案そのものにも適用時期に関する定めが置かれています。ただし、そこで基準とされている「本ガイドラインの改定日」がいつになるかは、案の段階の文書には記載がありません。報道等では複数の見方が出ていますが、確定した情報として扱うべき段階ではありません。

意見募集は2026年9月4日に締め切られました。確認日時点で正式な改定版は公表されておらず、現行のガイドライン(令和8年2月24日改訂)が適用されています。現時点で申請される方は、現行の基準で審査されます。正式なガイドラインが公表され次第、この記事も更新します。

本記事は確認日時点の一般的な整理であり、個別の申請の結果を保証するものではありません。ご自身のケースについては、資料を拝見したうえでお答えします。

改定前の手数料で申請できる残りの開庁日は手数料改定前の申請は残り5営業日で整理しています。

永住申請の提出書類のうち、身元保証書については永住申請の身元保証人は誰に頼むかで、入管庁が示す責任の範囲とあわせて整理しています。

この記事の根拠

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