在留資格「経営・管理」
経営・管理ビザの更新はいつから新基準になるのか──3年の経過措置と、猶予期間にやるべきこと
公開 2026.08.06 / 最終確認 2026.09.17
- 根拠
- 出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の一部改正(在留資格「経営・管理」)
- 施行日
- 2025年10月16日
- 経過措置
- 施行から3年(2028年10月16日まで)
- 確認日
- 2026年8月6日時点の公表資料により確認
2025年10月16日、在留資格「経営・管理」の許可基準を定める省令の改正が施行されました。資本金の水準が500万円から3,000万円へと引き上げられたことが大きく報じられましたが、すでに在留している方にとって切実なのはそこではありません。「自分は次の更新でどうなるのか」という点です。
結論から書くと、既存の在留者には3年間の経過措置が設けられており、施行と同時に全員が新基準を求められるわけではありません。ただし「3年間は何もしなくてよい」という理解は正確ではありません。この記事では、新基準の中身と経過措置の範囲、そして猶予期間のうちに着手すべきことを順に整理します。
何がどう変わったのか
改正前は、事業規模について「資本金または出資の総額が500万円以上」か「常勤職員2名以上の雇用」のいずれかを満たせばよい、という選択制でした。改正後はこの選択制が廃止され、資本金等と常勤雇用の両方が求められます。あわせて、日本語能力・経営経験・事業計画・事業所についての要件が新設または明確化されました。
| 項目 | 改正前 | 改正後(2025年10月16日〜) |
|---|---|---|
| 資本金等 | 500万円以上 | 3,000万円以上 |
| 常勤職員 | 2名以上(資本金との選択制) | 1名以上(資本金と両方必須) |
| 日本語能力 | 要件なし | 申請人または常勤職員のいずれか1名がB2相当以上 |
| 経営経験・学歴 | 要件なし | 3年以上の経営・管理の経験、または経営に関する修士等 |
| 事業計画 | 提出は任意 | 中小企業診断士・公認会計士・税理士等の確認が必要 |
| 事業所 | 比較的緩やか | 独立した事業所の確保(バーチャルオフィス等は困難) |
資本金等について、法人であれば株式会社の払込済資本の額、持分会社であれば出資の総額を指します。個人事業の場合は、事業所の確保費用、雇用する職員の1年分の給与、設備投資費用など、事業のために投下されている総額で見ます。
日本語要件は「本人が満たす」必要はない
誤解が多いのがここです。求められているのは、申請人または常勤職員のうちいずれか1名が「日本語教育の参照枠」におけるB2相当以上の日本語能力を持っていること。申請人本人が日本語を得意としない場合でも、要件を満たす常勤職員を配置することで対応できます。
日本人や特別永住者の方はそれ自体で足りますが、それ以外の方は次のいずれかで証明します。
- 日本語能力試験(JLPT)N2以上の認定
- BJTビジネス日本語能力テストで400点以上
- 中長期在留者として20年以上日本に在留していること
- 日本の大学等の高等教育機関の卒業
- 日本の義務教育を修了し、かつ高等学校を卒業していること
経過措置──2028年10月16日までの更新はどう扱われるか
すでに「経営・管理」で在留している方については、施行から3年以内、つまり2028年10月16日までに行う在留期間更新許可申請に限り、新基準を満たしていない場合でも、経営の状況や新基準を満たす見込みなどを踏まえて個別に判断される取扱いとされています。また、施行日前に受け付けられた申請には、原則として改正前の基準が適用されます。
逆に言えば、3年を経過した後の更新申請では、改正後の基準を満たしていることが必要になります。改正前の基準で許可を得た方も、この点は同じです。
なお、この経過措置はすでに経営・管理で在留している方の更新申請にのみ適用されます。これから新しく取得する方には猶予がありません。新規取得の場合に必要な要件は、経営・管理ビザを新しく取るには何が必要かで整理しています。
実務上の注意:経過措置は「免除」ではなく「猶予」です。個別判断の対象になるということは、審査でなぜ現時点で満たしていないのか、いつどうやって満たすのかを説明する立場に置かれる、という意味でもあります。何の準備もしていない状態で臨む更新と、増資や採用の計画を資料で示せる状態の更新とでは、求められる説明の重さが変わります。
猶予期間にやること
1. 現状の棚卸し
まず、資本金等の額、常勤職員の有無と人数、日本語要件を満たす人が社内にいるか、申請人の経営経験年数と学歴、この4点を書き出します。どれが足りていて、どれが足りていないのかが具体化しないと、対策の順番が決められません。
2. 増資は最も時間がかかる
4つの中で、いちばん時間と原資を要するのが資本金です。事業の利益から積み増すにしても、外部からの出資を受けるにしても、数年単位の計画になります。猶予期間の3年をどう使うかは、実質的にこの増資計画をどう組むかとほぼ同義です。着手が遅れるほど選択肢は狭くなります。
3. 日本語要件と常勤雇用はセットで考えられる
常勤職員1名以上の雇用が必要になり、かつ日本語要件は常勤職員でも満たせます。採用をこれから行うのであれば、N2以上を持つ方を1名採用することで、2つの要件を同時に処理できます。人件費は増えますが、要件充足という観点では効率のよい手当てです。
4. 事業計画は「専門家の確認」まで含めて準備する
事業計画書そのものは以前から実務上作成していたものですが、改正後は中小企業診断士・公認会計士・税理士といった専門家による確認が求められます。依頼先の確保と、確認に耐える内容——売上根拠、コスト仮説、月次の資金繰り——の作り込みには時間がかかります。更新の直前に着手して間に合う性質のものではありません。
入管庁が「事実ではありません」と否定していること
入管庁は、この改正について特に問合せが多い質問への回答を公表しています(令和8年6月26日更新)。そこで明確に否定されている誤解が2つあります。
| よくある誤解 | 入管庁の回答 |
|---|---|
| 3年以内に3,000万円を準備できなければ帰国しなければならない | 事実ではありません |
| 個人事業主も3,000万円の資本金を準備しなければならない | 事実ではありません |
前者について入管庁は、施行日から3年を経過した後の更新申請でも、経営状況が良好であり、法人税等の納付義務を適切に履行しており、次回更新時までに改正後の許可基準を満たす見込みがあるときは、その他の在留状況を総合的に考慮して許否判断を行うとしており、3,000万円に満たないことのみをもって一律に不許可処分となるものではないと明記しています。
後者については、個人事業主の場合の「3,000万円」は資本金ではなく、事業所の確保や雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など、事業を営むために必要なものとして投下されている総額を指します。資本金を準備するものではない、という整理です。
ただし、経過措置の期間中でも不許可になり得ます。入管庁は、経営状況や納税状況に問題がなくても、労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令の遵守状況、社会保険・雇用保険・労災保険の加入状況や納付状況、事業に必要な許認可の取得状況に問題がある場合には、審査で消極的な要素と判断され、更新が認められない事例もあるとしています。「3年間は何もしなくてよい」という理解は正確ではありません。
長期の出国には目安が示されている
改正後の取扱いとして、在留期間中、正当な理由なく長期間の出国を行っていた場合は、本邦における活動実態がないものとして在留期間更新許可は認められないとされています。
その目安について、入管庁は次のように答えています。個々の在留状況に応じた判断としたうえで、一般論として決定された在留期間のうち、累計でその過半を超える期間について再入国許可による出国(みなし再入国許可による出国を含む)をしている場合には、正当な理由があるときを除き、更新の審査において消極的な要素として評価されるとしています。
在留期間が3年なら、累計で1年6か月を超える出国が一つの線になる、という読み方になります。海外との往来が多い経営者の方は、日数を記録しておくことになります。
自宅兼事務所は原則として認められない
入管庁は、改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所を確保する観点から、自宅を事業所と兼ねることは、原則として認められませんとしています。事業所の広さについては、一律に答えることは困難としたうえで、改正後の規模等に応じた経営活動を行うために必要かつ十分な広さを確保する必要があるとされています。
また、業務委託を行うなどして経営者としての活動実態が十分に認められない場合は、在留資格「経営・管理」に該当する活動を行うとは認められないものとして取り扱う、ともされています。具体例として、業務の大半を外部に委託し日常的に本人による経営活動を行っていない場合や、具体的な事業内容や財務状況など経営者として本来把握すべき情報を把握していない場合が挙げられています。
永住申請への影響
見落とされやすい点です。入管庁は、施行日後、改正後の許可基準に適合していない場合は、「経営・管理」等からの永住許可は認められませんとしています。
更新は経過措置で通っても、永住申請は別ということです。永住を視野に入れている方は、経過措置の期間中であっても新基準を満たしておく必要があります。更新で考慮される事項もあわせてご確認ください。
どうしても満たせない場合
要件を満たす見込みが立たない場合、他の在留資格への変更を検討することになります。事業内容や本人の学歴・職歴によっては「技術・人文知識・国際業務」などが選択肢に入ることもありますし、身分系の在留資格に該当する事情があればそちらが優先されます。ただし、いずれも別個の要件を満たす必要があり、経営・管理からの横滑りが常にできるわけではありません。早い段階で見通しを立てておくほど、取りうる手は多くなります。
なお、更新申請の手数料は2026年10月1日から変わります。決定される在留期間に応じた段階制になるため、更新のたびに納める額が変わってきます。在留手続の手数料が2026年10月1日から変わるで金額表を整理しています。
まとめ
- 新基準の施行日は2025年10月16日。資本金等3,000万円と常勤職員1名以上が両方必要になった
- 日本語B2相当は、申請人本人でなく常勤職員が満たしてもよい
- 既存の在留者は2028年10月16日までの更新申請について個別判断の対象となるが、免除ではない
- 3年経過後の更新では新基準の充足が必要になる
- 増資と事業計画の専門家確認は準備に時間がかかるため、猶予期間の早い段階で着手する
- 入管庁は「3年以内に3,000万円を準備できなければ帰国」「個人事業主も資本金3,000万円が必要」をいずれも事実ではないと明記している
- 経過措置の期間中でも、労働関係法令・社会保険・許認可に問題があれば更新が認められないことがある
- 長期の出国は、在留期間の過半を超えると消極的な要素として評価され得る
- 自宅兼事務所は原則として認められない
- 永住申請は経過措置の対象外。新基準に適合していないと許可されない
制度の運用は今後の通知等で更新される可能性があります。本記事は上記の確認日時点の公表資料に基づく一般的な整理であり、個別の申請の結果を保証するものではありません。ご自身のケースについては、資料を拝見したうえでご説明します。
更新の判断にあたって入管庁が考慮するとしている事項は、経営・管理ビザの更新で不許可を避けるためにで整理しています。
この記事の根拠
- 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html - 出入国在留管理庁「『経営・管理』の許可基準の改正等について(令和7年10月16日施行)」(PDF)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf